読売新聞  1999年9月6日   記事より

健康法の一つとして日本でも定着した気功。

ゆっくりと身体を動かし、呼吸を整えることで、「気」の流れをスムーズにするのだという。ストレッチやラジオ体操とは、どうも意昧付けが違うらしい。「気」って何?

(渡辺勝敏、写裏も)


呼吸で心拍数など上昇      自律神経に作用

東京・神田の東京電機大電子工学科。教授の町好雄さん(59)の研究室で、中国人気功師(49)を被験者に実験が行われていた。気功師の頭には脳波を測るセンサー19個が埋め込まれた帽子。心拍数、血圧、呼吸数、心電図など計16種類のデータを測定するため、胸、腕、手、指、鼻、首、足にもテープでセンサーが張りつけてある。

「体をめぐる生命エネルギー」などと「気」は語られるが、科学的に解明されてはいない。町さんは「気」の実態に迫ろうと、300人以上の気功師を測定してきた。
「安静状態で3分、その後、気功状態を10分。お願いします」。町さんの書葉で、十数人の学生らが見守る中、実験が始まった。
気功師は、膝をやや屈し、両手を前に突き出してじっと立ったまま。気功状態に入っ
ても外見は変わらない。しかし、計測器にはっきり現れた。一分間で70程度だった心拍数が、十数秒の間に120にはね上がった。呼吸数も通常の倍の一分間に約30回に急増している。
「気功師は、呼吸を調節して、自律神経にかかわる心拍数や血圧などをコントロールする。首のけい動脈上のセンサ「からは、脳への血流の増加が確認できる」と町さん。呼吸を遅くしたり、血圧を下げたりする気功法もある。
また、気功には、気をめぐらせる内気功と、外に気を送る外気功があるとされる。
研究室では、続いて気功師が、被験者となった一人の学生の後から「気」を送る実験も行われた。20分後、学生は「特に何も感じませんでした」。ところが、体表面温度、心拍数、脳波など気功師と被験者の両者で測定したデータを解析すると、気功師に現れたのと同様の変化が学生にも起こっていた。
町さんは「中国でも『気』は物理現象か、催眠かという議論は行われているが、測定値が同調するのを見ると、『気』という何かがあると考えざるを得ない。還赤外線のような電磁波が関係しているのかもしれない」と話す。

 

脳波の出方も大きく変化
めい想状態を創出



一方、日本医大情報科学センター研究員の河野賢美子さん(55)は脳波に着目し気功師らのデータを集めている。
「脳が休んでいることを示すアルファ波の出方に特徴があるんです」。例えば目を閉じると、視覚野がある後頭部にアルファ波が現われる。気功師が気功を始めると、様々な情報や思考を統合する前頭部にもアルファ波が現れるのだという。
「座禅やヨガのめい想状態。ソロバンや将棋、音楽などに集中している時にも、よく似た変化が現れます。雑念がない状態と一言えるでしょう」と河野さん。脳波の面から見ると、気功中は何かに集中している状態という。
超能力なども扱う「国際生命惰報科学会」では、国立の研究機関や大学の研究者らが、「ネズミにがん組織を増殖させ『気』を送った場合の抑制効果」「ビルの4階から『気』を送って1階にいる人に伝わるか」といったテーマで発表を行っている。
気功前後の内分泌や免疫能などについて調べている東京工業大教授の樋口雄三さん(56)は「経験的に言われている『気』という現象にやっと科学のメスが入り始めた段階。本格的に研究する必要がある興昧深い領域」と言う。
電気も魔術的なものだと思われていた時代がかつてあった。21世紀。科学によって「気」が解明されるのか、それとも20世紀の迷信と片付けられることになるか・・・・。


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中高年の自己鍛錬に

日本気功協会(東京・市ヶ谷)は、会員数約1200人の国内最大の気功修養団体。「気功は健康増進のための自己鍛練法」と位置づけ、都内で気功教室を開いている。
協会の気功教室をのぞくと、指導員の合図のもと、30人ほどがゆっくりと前後左右に身体を動かしている。参加者に、「気」を感じるかどうか闇いてみた。初参加の胃腸が弱いという女性(47)。「中腰の姿勢がくたびれますね。動きはゆっくりだけど、いい汗をかいた気分です。
ついて行くのがやっとで、『気』と言われてもまだピンときません」
気功歴9年の本間光子さん(60)一は「始めて半年ぐらいたってからでしょうか、身体のしんから血のめぐりが長くなったような感じがして、『気』の流れが分かるようになりました」と言う。
経験を積み、コツを覚えると「気」の流れを感じるようになるらしい。「経験者の話をいくら闇いてもピンとこないでしょう。自分で感じてみなければ」と理事長の山本政則さん(67)。

同協会(03・3261-7871)では、体験講習会も開いている。

写真  中高年を中心に健康法として気功は行われている(東京・千代田区の日本気功協会で)

 

  医療のほか武術に使用


日本気功協会によると、
「気」は、人体を縦横に走る経絡(けいらく)を通って循環する。「功」は鍛えるなどの意味。気功は、生命エネルギーである「気」の流れを整えることにより、病気への低抗力や免疫力を高め、ストレスを取り除く。養生や病気治療のために行われる医療気功のぽか、人を倒す武術気功などがある。
訓練では、調身(正しい動作・姿勢)、調息(ゆるやかで深く長い呼吸)、調心(安定した心)の状態を作り上げる。
なお、経絡は中国医学の墓本的な考え方だが、現代医学で存在は認められていない。

 

代替・伝統医療研究へ連合会議


東洋医学などデータ収集治療・予防方法確立図る

気功、針きゅうハーブ健康食品・・・・・。
民間医療法としてはおなみでありながら、
現代医学の研究の対象になっていなかった分野に科学的な光をあてようと、「日本代替相補・伝統医療連合会議」が昨年暮れに結成された。治療法などの有効性や安全性に関する研究を行うのが目的だ。
東大名誉教授(人工臓器、レーザー医学)で理事長の渥美和彦さんは「人間の治療は西洋医学だけでは十分ではない。東洋医学にも有益なものがあるが、効果を示す科学的なデータが乏しい。それを研究していきたい」と語る。.
米国では国民の3分の1が代替・伝統医療を利用しているという調査がある。NIH(米国立衛生研究所)は今年、代替医療センター、を開設。がん、老化、痛みなどテーマ、ごとに、13大学で代替、伝統医療の研究が始まっている。同会議は、こうした米国での動きを受け発足した。
先月都内で開かれた同会議の大会では、米国での栄養補助食品の現状、気功と西洋医学、精神心理療法についての講演などが行われた。
渥美さんは「体系的にデータを集め、治療や予防の標準的な方法を確立していきたい。時間はかかるが、真の健康に役立つ道が示せるはず」と意欲を見せている。

 


国際生命情報科学会 (ISLIS) のホームページ

http://wwwsoc.nii.ac.jp/islis/sjis/islis.htm

本会は生体機能、脳生理学、精神活動、東洋医学、伝統医学、生体放射、気、気功、精神集中、潜在能力、感覚外認識、精神的物理現象などの実証的解明を行い、21世紀の科学、技術の新しいパラダイムを切り開き、人類の平和な文化と福祉に寄与することを目的とした学会です。

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