深呼吸療法とスワイショウ      

 奥が深い、むずかしい気功は気功にとりくんでいるという実感がある。しかし動作や意識の使い方を覚えるまでは、しっくりいかない。それにひきかえ軽いのりのやさしい気功は、頭で理解する必要はなく、当初から没頭できる。
 気功を大きく動功と静功とに分けることができる。立って上半身の力を抜いて、両腕を同時に前後にふり続けるという、スワイショウは動功の中では、極めて簡便でありながら、やってみると確かな手応えがある。簡単な動作ゆえに、応用範囲も広い。徐々に回数を増やし、40分までになれば、効果的である。
 静功の中にも、極めて簡単な方法がある。その一つが深呼吸療法である。あぐらとか、正座とかその姿勢を維持するだけでも大変だ。その点、寝てやる方法は楽だ。
 気功の気は呼吸の意味で、功は鍛練であり、気功は呼吸鍛練をさすという人もいる。古くは吐納、行気、服気などと呼ばれていた。
 自然呼吸−腹式呼吸−逆腹式呼吸というのが一つのパターンであるが、風−喘−気−息などというのもある。肩呼吸、胸呼吸、腹呼吸という分け方もある。
 そのように、いろいろ言われてきた呼吸鍛練を簡単にしたのが、深呼吸療法である。1950年代に許映高によって、発表され影響を与えた。

 スワイショウ

 掌感訓練になる。エンドルフィンの分泌を促進する。
 胃腸病、喘息、神経症、不眠症、肝臓病、心臓病、肩凝り。
 力まないで行う。腕をふることにより内臓を刺激する。
 形意拳家の秘伝の宝。いかなる状況でも、緊張と弛緩をコントロールできるようにするための武術の鍛練方法。リラックスした状態で戦えるようになるといえるかな。
1960年代、上海に広まる。結構治療効果があって、医師が広めたらしい。
 両手がポンプ効果になり、掌感訓練になる。腕をふることにより内臓を刺激する。
 胃腸病、喘息、神経症、眩暈、不眠症、肝臓病、心臓病、肩凝りなどに効果があ
る。(特に、胃腸はよく動きます。)

姿勢:足を肩幅に開き足先を前に向け、膝を自然にゆるめる。首筋の力を抜いて、頭のてっぺんをすっと引き上げるようにして、下あごを自然にひく。
顔は笑顔で、舌を上あごの歯茎にそっとつけます。全身の余分な力をぬいて立ちます。胸部の力を抜き、両肩をわずかに前に向け、背中の筋肉をゆるめてややひろげるようにする。背筋をまっすぐにして、目はまっすぐに前を見ます。
肩の力をぬいて、後ろへ両手を振ります。
動作:両肩の力を抜いて、両腕を自然に前後同時に振る。後ろはお尻を越えない、
前はへその高さを越えないように。反動をつけない。両肩をそびやかさない。振りが大きくなってもさしつかえない。
手指は自然に伸ばし、掌心が少し凹むようにする。
手指をピンと伸ばしてしまうと運行が妨げられて気が掌心の労宮穴に達しにくくなる。前へ戻るときは惰力で自然に戻ります。振る(緊張)戻る(リラックス)を繰り返す。
両肩の力を抜いて、床をつかむようにしない。自然に平衡が保たれ床をつかむ力が生まれてくる。
収功:止めるときはゆっくり次第に振幅を小さくしてじょじょに止まる。
   そのまましばらく立っている。

 毎日朝晩、40分で2千回を目安に行う。終わった後で、壮快感がある程度が良い。
 気象条件の悪いとき、空気が汚れている場合、感情が激しいときは避ける。(特に天候には注意)
 足が熱くなったり、痛みを感じてもそのまま続ければ良い。自然に任せる。
 (脚が痺れたり、足の裏が焼けるように熱いくなる人もいる。)
 数を数えながら行うと入静しやすい。
 頭は前上方に向けないで、前下方に向けるようにして、気血の上向を避ける。

 他にも少しづつ異なる方法がある。左右に両腕をねじるように回す方法で、でんでんたいこのふりこのように、同時に腹部と背中を軽く叩くやり方。これは腰痛にいい。
方法:遠くを見ながら、顔は正面をむいたまま腰、肩をねじるようにして、叩く位置は腹部、背中の中心に沿って上下させて行きます。
 最近では、気功というより、気功の準備運動のような位置になっているようですが、
やってみると、なかなかいいです。

 深呼吸療法の方法

(実際はいわゆる深呼吸とは違う、)
姿勢:座っても、寝てもいい。寝て行う場合、上向きに体をまっすぐにして、両足を伸ばして足首を組んで重ねる。両手は下腹の上に重ねて、軽く握るようにしておく。方法:歯を合わせ、舌先を上の歯ぐきに軽くつける。または、舌をたてに丸めるようにして舌の両端を上の歯の奥につける。息を吐くとき、ゆっくり空気を出す通り道である。 鼻から息を吸い込んで、空気を下腹へ導く、同時に下腹から胸に充満させふくらむ。一杯になったところで、ちょっと止め、スーといいながらゆっくり口から、舌の隙間を通って吐く。始めは自然に、慣れてきたら、次第にゆっくり長くしていく。吐き切ったところで、ちょっと止め、鼻から吸う。このように胸式呼吸と腹式呼吸を同時に行う。
 収功は、そのつどやっておくほうがいいが、そのまま寝てしまえば収功は必要ない。手をこすって、顔をよくこすったり、手のひらで体を軽くたたいたりでよい。
 下腹を意識して、呼吸に専念する。呼吸回数は10回から始めて100回程度で充分。1か月続けると手が熱くなる、さらに下腹部に熱気が生じ、熱団となり、6か月後には、熱団が、移動するようになる。*その先は小周天になっていく。
 
 

すわいしょうの由来と注意。
 立って両うでを前後に40分間で2000回振ると言うすわいしょう。
 スワイショウと中国語の発音そのままになっている。すわいは漢字では用という時の真ん中の線がL字に曲がった字でshuaiと低く発音する。しょうは手shouと低く発音する。意味は腕を前後に振ること。振り回す、ほったらかすなどの意味である。
 日本語では使わない漢字ということらしい。

 上海体育宮の武術指導者である周元龍はすわいしょうについて独自に調査した。

一、すわいしょうの由来
 実際に動かすのは腕であるが、慣習上、手という字を当てている。
 1961年、上海の形意拳家である田瑞芳先生が伝授を始めた。もともとは力をこめて速度も早くやるものであったが、慢性病患者、病弱者の体質に合わせて、軽く羽のように動かす方法に改良して教えたところ、効果が認められとた。田瑞芳先生が1966年に亡くなった後も、全国に波及して百病皆治といううわさにものって盛況を呈した。
 彼は生前、すわいしょうは形意拳に伝わる秘伝の一つで、形意拳の貴重な宝であると言っていた。他の形意拳家たちはスワイショウを知らなかったので、本当に形意拳のものなのかはわからない。しかしその理論と解釈は形意拳と同じものなのである。
 本当に形意拳に伝わる秘伝の一つなのか、田瑞芳先生が自ら創造したもので、自分の先生である馬玉堂、さらには形意拳の郭雲深の権威を借用したものか今となってはわからない。

二、その効果
 百病皆治というのはともかく、ある種の慢性病に顕著な効果が認められている。
 その理論は 鬆(放鬆)、動静、自然である。
 鬆は力をぬいて、リラックスすることであるが、完全に弛緩して力をぬくわけではない。最低姿勢と動作を維持する以外の筋肉を極力弛緩することである。
 動は、血液循環を促進、鬆は毛細血管を開く。外の動きが、内臓をはじめ各器官を動かし、特に横隔膜の上下は内臓の按摩作用がある。
 汚血を排出し、胃腸の蠕動を促す。血行がよくなり心臓をを整える。関節、筋肉が適度に動き刺激され鍛練される。このため関節炎には特に効果が高い。
 静は、意識を部位に集中することにより、大脳が休まる。数を数えながらおこなうと、大脳の一部だけが興奮、そのほかの部分がやすまるという効果があり、神経衰弱によい。 入静しやすいという利点もある。動いているため眠り込まないので、気功としての価値が高い。「動中求静」の練習になる。
 田瑞芳先生は「気はまわさなくても、自然にまわり。力は使わないでも体内の勁は自ずと出てくる。息は整えなくても自ずと整う。」と指導していた。

三、練功方法  
 開始前に数分間自然に立って、落ち着けてから始める。
 微笑みながら行う。口、歯を硬く閉じないようにする。
 前に腕を出すときいくらか手のひらを前に向けるようにする。
 数を数えながら始めるのを太極と言い、数えないでやるのを無極と言う。無極の場合は自分の意思ではなく無意識に動いていく。
 皇極はさらに爆発的に動く。そういう場合は徐々に静めるようにする。
 前に三後ろに七の高さの割合に動かす方法が効果が高い。前に七後ろに三の高さの割合に動かす方法もある。
 注意事項
1、怒ったり、喜んだり精神状態が安定しないときは有害無益である。      
2、天候不順の時、空気の悪いところではやらない。
3、めがねや、体をしめつかるような衣服などを避ける。
4、内臓に疾患がある人は軽く、時間も短く始め、次第に増やす。
5、気血が上がりすぎないとうに、下前方を見て行う。上方は向かないこと。
6、勝手に動きが大きくなったり、反応がでても、すぐ止めたりしないで、自然に任せながら徐々に治めるようにする。
7、ただし、めまいや、内臓に気持ち悪さがでたら、すぐ止め休息してからまたやる。
8、肛門を閉めて引き上げるようにするというのは、自然にそうなってくるもので始めは追及する必要はない。
9、動作、姿勢、スピードを自分で変えないように注意する。

 あれほど盛んだったすわいしょうが今日みられないのは、上海の公園で一気に4000回やった老婆が突然たおれて、一命は取り止めたが、話題になったことがきっかけであった。しかし、すわいしょうは気功中の比較的すぐれた功法には違いない。
  



 中 国 気 功 

 

ホームページ