周天法について

 小周天 子午周天とも言われ、煉精化気の過程である。河車、黄道とも言われる。 十二支の子が会陰、午が百会に相当。
 北国の春の農村、水田に水を供給する人力で回す水車。からからと桶が水をすくってはこぼし回りつづける。周天は河車とも呼ばれる。河車は農民が河から水を汲み上げる水車にたとえている。
 空には太陽が通る黄道がある。黄道こそ周天の道筋である。人体では督脈と任脈にあたる。

 小周天の分類

1、意念周天、意念で引気して行う。医書にいう小周天。
  意通 まだ充分に丹田に気が旺盛でないのに強い意念を用いて気を通すこと。
     質の低い小周天であるが、効果はある。
2、経絡周天、気の高まりにまかせて、経絡上を自然に運行。   
  気通 気が自ずから動き出し、自ずから通る。
     水がたまってあふれてくるように自然に起こる。
3、丹道周天、脊髄の中を運気、経絡上ではない。困難で危険が伴う。
     薬物が循環する。小周天の場合小薬。

 道教あるいは道家の修道法には、服食法、房中法、導引法、禁法、呪法、占卜法、などがある。そのうちの導引法は姿勢、呼吸、意念を含んだ現在の気功の原点と言える。なかでも秘伝として伝えられてきた周天法であるが、1950年代になると周天を応用した気功療法が相次いで発表された。意念周天がこれにあたる。

例1  1955年北京  秦重三による方法
姿勢は問わない。全身放鬆 呼吸調節
 舌先を上顎につけ、ゆっくりと肛門を引上げ、吸気で腹部を収縮させながら、尾閭から督脈に沿って意念で気を百会まで上昇させる。
 呼気で腹部をふくらましながら、肛門をゆるめ、百会穴から2つに分かれ両眼を通り下先に降りる。ものを飲み込むように任脈を降りて丹田に戻る。さらに会陰まで下ろし、息を吐き切る。これを続ける。

例2 出典不詳
 立った姿勢で、まず腹部を両手で円を描きながら摩擦する。
 丹田を軽く押してから、両手を手のひら上にして上げていきながら、吸気で
 会陰から気を起こし、陰器をめぐり、任脈を上昇、百会まで上げる。
 両手は上で指を広げて伸ばし、手のひらを向かい合わせて天の気を受け、呼気で
 手のひらを下にしてゆっくりした呼吸に合わせて下ろしながら
 督脈に沿って百会から大椎、命門、長強、会陰、丹田まで下ろす。
 意守丹田をしばらく行い、木の根が成長するように意念で湧泉まで気を下ろし、足 を3回床をつかむようにして、肛門陰器を引き上げ、呼吸3回。6回繰り返す。
 上記に連続して、
 丹田を軽く押してから、両手を手のひら上にして上げていきながら、吸気で
 会陰から気を起こし、肛門を巡り、督脈を上昇、命門、大椎、百会まで上げる。
 両手は上で指を広げて伸ばし、手のひらを向かい合わせて天の気を受け、労宮と百 会とを向かいあわせてから、手のひらを下にしてゆっくりし下ろしながら、呼気で 任脈に沿って百会から丹田まで下ろす。
 意守丹田をしばらく行い、木の根が成長するように意念で湧泉まで気を下ろし、足 を3回床をつかむようにして、肛門陰器を引き上げ、呼吸3回。6回繰り返す。

3、丹道周天
 伝統的な丹道周天こそが周天の本である。
 周易は八掛の易の経典で医書である黄帝内経よりも古い陰陽書である。
 漢代の末期、魏伯陽は「周易参同契」を著し、周易の理論を借用して、外丹術の用語を使って内丹術を語り、万古丹経王と呼ばれるようになった。参同契の参は数字の三である。唐代には鐘離権、呂洞賓。宗代には悟真篇を著した張伯端が有名。
 外丹術の 三黄四神は 硫黄、雄黄、雌黄、朱砂、水銀、鉛、硝石です。これを鼎(なべ)にいれ火で熱してできた化合物を飲んで、不老不死にきくわけがない。この毒性のため死亡する人も出てくる。そこで内丹術が盛んになる。
 内丹では鼎と炉は体内に求められ、薬物は精気神ということになる。
火候は煉制金丹中の火力の変化であり、内丹では呼吸にあたる。
 起火から始まる火候には以下のようなものがある。
 武火 吸う方を長く、強い呼吸。意念を緊急に用いる。
 文火 吐く方を長く、弱い呼吸。意念をゆっくりした速度で用いる。
 淋浴 休息、養生。
 止火 完成して終わる。止火の徴候があってから3回で止める。
 走火 火が強すぎる場合。走火入魔。

 百日築気
 丹田に鼎を意識して、呼吸の火によって、精を原料に気を練る。
 建築で言えば基礎工事、未だ精通のない子供は必要がないと言われる。
 実際は1回、1時間、1日2〜3回で小周天2〜3年、大周天8〜9年と言われる。
 小周天の過程を6段階にわけている。
1、煉己 外界との関係を絶ち、雑念を排し、意守丹田によって心と体を練る。
     凝神入気穴 意守丹田
  存想(意念を1点に置いて想像)、存神(意念を1点に置く)、凝神(意念凝集)  内観などを臨時に用いて、入静する助けとする。
  開始時、呼吸数を数えたり、息の出入りを内聴したりして、あとは無になる。
  雑念が排除できないと、煉己不純、入魔を呼ぶ。その場合は自然に出て行くのを  待つ。煉己不純の入魔は幻景で大周天に多い。

2、調薬 煉己をすることで、薬物(精、気)を調整する。
     へその奥、前7後ろ3の更に下1寸下がったところ。
   正しい姿勢、雑念排除、精神安寧、意念集中、凝視気穴、調和呼吸によって
   丹田の精気が旺盛になるのを待つ。

3、産薬 小薬、真種子ができる。意識的に作るのではなく、必ず自然のままに。
     活子が生れ、活子がはっきりとしてきて、活子の内気が充実する。
   活子が生れることを一陽生と呼ぶ、このとき火は強くする。
  一陽生は鳥が卵をふ化させるように、待つことが要求される。
   丹田と陰毛のはえぎわの間を行ったり来たりする感覚、丹田が温暖。
   酔ったような、気持ち良さ。
 先天祖気の誕生
 下丹田に気を集め、小薬ができるとき、恍惚の中で、光が見え、全身がゆるみ丹田  が溶けて暖かく、丹田は火と燃え、神光は目前に広がって、なんともいえない
 注意:陰器はぼっきしても、妄想しないこと。自然に任せること。

4、採薬 小薬をちょうどよい時期に採集する。撮、抵、閉、吸の4っつを使って。      撮提谷道、舌抵上顎、目閉上視、鼻吸莫呼。 
     吸気のとき武火で、鼻で息を吸い、肛門を引き上げ、舌の先を上顎につけ、    目を閉じて上を見て、息を止める。
    武火、猛火、強い呼吸で薬を炉にいれる。

5、封固 薬物を丹田に戻し、文火で、丹田に温存養生。

6、煉薬  進陽火 武火つまり吸う方を長く、強い呼吸で、気が督脈を上昇する。          吸気が主、1回36呼吸。吸気を長く、呼気を短く。
          36呼吸を3回、淋浴36呼吸、36呼吸2回。
           淋浴は自然に休養。
         武火のままで三関を通す。
      退陰符 文火で任脈を下り、丹田に戻る。
          呼気が主、1回24呼吸。呼気を長く、吸気を短く。
         24呼吸を3回、淋浴24呼吸、24呼吸2回。
        頭頂にあがったら、文火にして上せき橋、十二重楼(気管)華盖、         中丹田、下丹田と降りる。
        あくまで、自然に起こるものである。
    2回目以降は一呼一吸で1回循環。 100回から300回 1時間程度

三関 尾閭関、夾脊、玉枕。
尾閭関 水火の関、脊椎骨の最下段。肛門の後ろ上方、長強穴。任督の境。
   精気が旺盛なら軽く突破。初めて通るときはりでつつかれるような刺激がある。 羊車 尾閭関から挟脊関。細く慎重に、軽く柔和。
  
夾脊  腕をたらしたときの肘の位置で、背中の中心。
 かろ(車へんに鹿、車へんに盧)、双関とも言われる。心に対応。
    かろは井戸につける滑車のこと。
 鹿車、 挟脊関から玉枕関。迅速敏捷。
  鹿は勢いよく急な山道を駆け登る。
 夾脊突破の方法
  両手を握り、1本の棒を持つようにして、肩を井戸の上につってある滑車が回る   ように肩胛骨を一緒に12〜36回意念集中して回転させる。

玉枕 脳の後ろ、風池穴の高さで中心。口に対応。
   鉄壁、牛の力で通過。
 牛車。 玉枕関から泥丸、極めて狭い。力を込めて猛然とあたる。
  牛は、力で障害物を突破する。
 玉枕突破の方法
  風池骨を摩擦して、両手のひとさし指、中指、薬指で枕骨の筋肉を上下に摩擦1  2〜26回、再び、目を閉じて上方を見る。さらに頭を少し下げて内気を引き上  げるようにする。こと9回。

 上下せき橋(せきは昔に鳥という字)
 人間は生まれたとき、臍帯びが切断され、呼吸が始まる。2か所で任督両脈が切断される。
  上せき橋  口
  下せき橋  肛門、尾閭
 古代には肛門に木の座をあてがい、木片で鼻の穴をふさぐなどの方法があった。
 
 
 

 小周天のイメージ

  丹田からあふれんばかりの冷気は、会陰にむかい、肛門付近で呼吸を始める。肛門周囲の筋肉が緊張と弛緩を繰り返しながら、ゆっくりと移動を開始する。尾骨にそって、仙骨裂孔の小さな孔へと進んで行く。軽く首の後ろを緊張させ、尾骨の先をさらに湾曲させる。息を吐きながらゆるめること数回。背骨は真空状態のストローになって、冷気が羊の歩みのような軽快さで、脊髄のなかに入って行く。そのとき針でさすような痛みが起きた。
 冷気は脊髄の中の脊髄液の通路を登って行く。羊は弱い動物の代表みたいに言われるが、胸に鈴をつけて、畑から収穫した稲を山のように背中に積んで、ゆっくりした足どりで家路に向かう。道は登ってはいるが、急ではない。
 途中まで登るとやけに急な絶壁が現れる。鹿の勢いで駆け登る。道は岩に阻まれてますます狭くなり、休んでは登り、登っては休む。
 ところが、目の前に大きな門で行き止まる。牛の力を借り、門にあたる。今で言えばブルドーザー、さすがの門も少しずつ開き始める。
 門が開き、冷気は勢いよく脳内に入って行く。
 

 小周天功道家紫霞功を学んで

 上海の朱先生は30才で独身です。10代から、気功を始め、推拿師として病院に勤めています。朱先生は私の気の流れを感じ取ります。
 一つは労宮がどの程度開いたか。これは、私が手を握って、こぶしの中に意識的に息を吐きながら気を送り、気の状態を見ます。また、先生が私の手に手をかざして気の強さを感じ取ります。
 上海気功研究所では、測定機器を使って労宮から発する外気の強さを測定します。

 小周天の道筋は、丹田に築基された内気を、会陰に下げ、督脈を上昇、脳から、任脈を下がって丹田に戻るということで、任脈、督脈の穴位をまず暗記しました。 私の理解では、道筋も一定ではないが、呼吸との対応、速度などが異なる。道筋が繋がるのは3日でも可能、いや、練功とは無関係に、だれでも必要な少量の気は周天している。この場合の速度はきわめて遅いと思います。
 この細い流れを意識できるかどうか、つまり、敏感度です。
 
 丹田に気の量が飽和状態になって、溢れるように会陰に流れ落ち、尾底骨で止められ、じりじりと細いところをやっと通過、痛みも感じる。命門でため、一気に後頭部に上がる、この時背骨がきーんと伸ばされ、熱気、光、などエネルギーがほとばしる感じ、まあ量がちいさければ、ぐっぐっと押し上げられるような、心地好い感覚。呼吸は腹式でも逆腹式でも、自然呼吸でも、呼吸は意識せず、意念だけでも、あるが、1呼吸1回転にまでなる。おしりのあたりが芯の方からつっぱってくるような感じ、あるいはわいてくるような感じ、
私はまず、息を吐きながら口から丹田までの道筋を練習して、横隔膜で丹田をおすような練習、最後に、背骨を息を吸いながら上げる練習にすれば、比較的安全だと思っています。
 
  


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