気功入門

内容一覧

 気功とは何か  座る姿勢
 中国医学の考え方  閑話休題
 気功をはじめるにあたって  呼吸
 練功するときの注意  気をかんじてみましょう

 

気功とは何か

 気功は, 舞踊や動物の真似から始まったと言われています。遥か昔の事ですから、今となっては、起源については、想像の域を出ないわけですが、おもしろいものであることは確かです。古代の巫術と結び付き、まじない、占い、おはらいのたぐいと一緒になって流行し、2000年前には、庶民が健康法として行っていたことが、文献に書かれています。巫女が病気を治すために、使ったりしていたようです。

 仏教がインドから伝わると、ヨガのスタイルも入ってきます。中国の宗教である、道教も盛んになって、次々に新しい流派が生まれてきます。 

 あれもこれも気功で、では、気功とは何か、と言われても、何がなんだかわからないというのが実際です。両手を出してもらい、気を送って、”どうですか、何か感じますか?感じたらそれが気です。気功を練習していくと、この気が強く感じるようになります。”と説明することになります。

 

 気功は、中国で数千年前にすでにあった、という記録が残されています。時代が下がり、宗教的な性質をおびたり、礼儀や、伝統を重んじてきた時代もあった気功。弟子から弟子へと秘伝されてきた気功も、現代は気軽にできる健康法となっています。

 そういう現代に、私は当初、気軽に気功をはじめ、みなさんと共有したいと、教室を開いた訳です。あまり物事にのめりこむことのない性格の私ですが、気功の良さ、奥の深さがわかってくると、これは今までのものとはちがった不思議な力があると感じるようになり、続けることになったのでした。

 疲れやすく、いつもだるいような感じがなくなって、頭がすっきりし、気分がよくなったのも気功の効果でした。風邪を引かなくなり、よく眠れる、胃腸の調子がよくなったり、体に自信が出てきたり。あれほど止められなかったたばこも、ぴたりと止められました。

 気を感じるようになると、世界が新鮮で、美しいと感じられるようになりました。

  一時、オーム真理教などといった社会悪が表面化して、気功の名を落としたこともありました。大変残念なことです。しかし、また気功も段々と見直され、その地位が向上してきたように思います。     内容一覧に戻る 

中国医学の考え方  

 気功を研究していくうちに、中国医学の考え方には新鮮な驚きを感じました。

 卑弥呼の時代に書かれた中国の医学書に、“黄帝内経”というのがあります。紀元前2600年頃の、中国の黄帝という神話時代の皇帝と、名医との問答形式で作られています。少し、引用してみます。

 “聞くところによると、昔の人は百歳になっても、動作が衰えないそうだが、今時の人は50歳で衰えているがいったいどういうわけであろうか。”と黄帝が名医に尋ねます。

 “昔の人は道というものを知っておりました。天地変化に逆らわず、修身養生の法、つまり気功を実践し、規則正しく食事睡眠をとり、適度に働いていたため、心身の健康が保たれ、天寿をまっとうできたのです。それに引き替え、現代は(もちろん、今から4000年前)養生を忘れ、酒を飲み、柔らかい食べ物をむさぼり食べ、情事にふけり、一時の快楽に精気を使い果たしてしまうため、50歳にもなれば、すっかり衰えてしまうのです。”と答える名医。

 というように、この時代に、すでに気功を忘れてしまったことを嘆いているのです。

 陰陽五行、五臓六腑、経絡とつぼ、なども、この時代に確立されているのです。、

 私が初めて、“経絡”という言葉を聞いたときには、何か大変な秘密を知ったような驚きを覚えました。今では中国ブームでよくとりあげられていますが、学生時代には、一度も耳にしたことはありませんでした。

 陰陽というのは、何となくわかりますね。昼は陽、夜は陰。夏は陽、冬は陰といった具合です。もともとは日向が陽、日陰が陰ということです。人間の体も、陰と陽とのバランスによって、健康が保たれていると考えられています。

 色々な文献をよむにつれ、中国では、4000年前に高度な文化が栄え、それ以来、時代とともに、だんだんと低くなってきたのではないかとさえ思ってしまいました。

 実際、想像を絶する量の漢の時代の文献は、今では解釈できない高度な内容も多いのです。また、安易に民衆の間に流布し、悪用されることを避けるため、隠語を使って、極めてわかりにくくしてあるのです。それが、研究が進まない原因の一つとなっています。

 

#現代中国医学の分野

  漢薬: 飲用薬:煎じ薬、湯液、丸薬、粉末薬、外用薬

  はり、灸:日本のはりより太くて長い。

  按摩、マッサージ: 日本では中国整体と呼ばれる。

  気功 :病院内で行われる以上のほか、多くの民間療法がある。

 

#現代中国医学の基礎理論

  陰陽五行学説: 陰、陽。この世にあるものは木、火、土、金、水に分類できる。

  臓象学説:内臓器官の解剖学と生理学、五臓六腑の意味と機能。

  気血津液学説: 気の作用、血液と体液の作用

  経絡学説: 気の通り道である経絡。縦横に20本体を走っている。

  病因学説:病気の原因には六淫、七情、痰飲、飲食、疲労、伝染病原、などがある。六淫とは風、寒、暑、湿、燥、火で、内寒、外寒というように、体の中から起こるものと、外から入ってくるものとに分けられる。 七情は感情で、喜、怒、憂、思、悲、恐、怯である。

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気功を始めるにあたって 

 気功は休んでも、それまでやった分だけ蓄積されています。1週間一回でも、効果はあります。少しずつでもやっていれば、途中休んでも、コップに水を注いでいるといつかは一杯になり、溢れ出すがごとく、確実に蓄積されていきます。

 私も、初めのうちはちょっとやると、すぐあきてしまって、一ヵ月も全然やらないという具合でしたが、不思議と効果が出てきたのです。

 ただし、気功で病気を治そうとするなら、計画的に毎日練習する必要があります。また、同時に、食事や日常生活全般に注意をはらわなければなりません。たとえば、喘息、風邪、せきを治すために、気功をしたあと、たばこを吸って、夜更かしをして、体を冷やしたりしたら、話になりません。計画をたて、実行していくことが必要です。

 気功を始めると、一時的に症状が悪化したり、古い傷が痛んだり、隠れていた病気が現れたりすることもあります。気功を練習したあと、下痢をしたり、とても眠かったり、ぐったりしたり、痒くなったり、汗をかいたりすることもありますが、体の中に固まっていた悪い物が出ていくときに現れる症状と考えられます。夜、いきなり、体のどこかが重くなったり、痛みがでたりすることもあるようですが、その後ぐっと楽になります。

 痛みというものは、正常な生理反応ですから、重く考える必要はありません。かえって痛みがないほうが、こわいこともあるのです。

 座骨神経痛を治すために気功をはじめたら、胃腸の調子がよくなったり、ということもあります。気功は総合的に、体の悪い部分に効いてくる。ですから、決して無駄にはなりません。

  肩凝りとか、腰痛とか頭痛とかの治療のために始めても、例外もありますが、すぐに効果が現れる訳ではないのです。効果があらわれなくても、止めてしまってはもったいないことです。

 3か月も続けていれば、大概の人は、以前の苦痛を忘れてしまうほど効果が上がっています。また、治ったと思って、止めてしまうのはもっともったいない話しなのです。

 身体の健康を目的とする気功のほかに、美容気功というのもあります。顔が美しくなるように、どくだみや、すぎなの化粧水でマッサージする、という方法もあります。

 また、気功を行ううちに、性格や、精神的な部分にも明らかな効果があり、運気も改善されます。

 気功にはいろいろな種類があります。その中から自分にあった功法を選んでやっていきましょう。

 教室では、やさしいものから順にやっていきます。その中から、自分にあったやり方を覚えて、毎日積み重ねていくことになります。

 気功には長寿の効果がある、というと、そんなにしてまで長生きしたくない、という人もいますが、不健康で長く生きていては苦痛です。死ぬときまで健康でいられるということです。また、漢方には未病を治すという言葉があります。未病とはまだ具体的に病気としての症状は現れてなくても、ほっておくと病気になる状態のことです。気功は自覚症状のない悪い部分を治して、健康を保つ働きがあるのです。 つまり、ただ、病気がない、という状態ではなく、もっと質の高い健康状態に持っていく、ということです。

 気功の三要素は姿勢、動作と呼吸、そして意念です。呼吸は長く息をすること、つまりは長息、長生きと言う事です。意念とは精神、神経、心を調整すると言う事です。

 この3つがそろうと気功になるわけです。

 気功を練習することを練功と言います。

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 練功するときの注意 

 気功は集中するといっても、体と精神、神経が緊張してしまってはいけません。リラックスと、適度な緊張が同時にある状態です。なるべくリラックスできる環境で行います。

 気功をやっていると、結果的に気持ちが楽になり、感情が落ち着くのですが、気持ちが高ぶっていたり、怒りや悲しみの状態のときは、気分転換してから練功します。

 あまりに、感情が激しいときには、練功は休んだ方が良いでしょう。平常心で気功を練習しないと、感情を更に刺激してしまうことがあるからです。

 自分の体力に合わせて、疲れない範囲でやります。繰り返しているうちに自然に体が馴染んできます。

 弛緩功、放鬆功など、睡眠薬より効くときがあります。しかし、なかなか眠れない人が睡眠薬のかわりに一晩中やって朝になったという笑えぬ話しもありますが。 前記のように、感情が非常におちつかない時には、さけたほうがよいでしょう。

  練功は静かなところで行いましょう。木の下とか、水の流れ、新鮮な空気の流れのあるところがベストです。気の状態がよい環境を作っておくことも重要です。ゆったりできる音楽を流したりするのもよいのです。

 気功状態になると、半分ねむっているような感じになるわけですが、そういう時に、電話のベルがなったり、来客があったりすると、体によくありません。

 気は動く感じがでてくると、手などにしびれたり熱くなったりする感じが出てきます。、特に手のひらにある、“労宮”というつぼが敏感になり、風、熱、涼しさ、しびれ、弱い電流、磁石のような反発、引き合う感じ、などを感じます。しかし、こういう感じがなくても、気は動いています。敏感に感じるからといって、それが上達とイコールではありません。人によって、感じ方や感度が違うのです。

 意守丹田、気沈丹田を心がけます。丹田というのは、気が集まる場所といった意味があり、一般には臍の下、奥になるわけです。初めのうちは、体の下の方に気を集めるように練習するのが肝心です。

 

 気功の三要素に従って練習します。

 姿勢、動作

 初めから、動作も呼吸も意念も、一緒に練習するのは難しいでしょう。まずは姿勢から練習します。気功には、動きのある“動功”と、動きのない“静功”があります。外見上、動きのない功法でも、気は動きますので、“静中動あり”、と言います。静功には、立ってやるもの、座ってやるもの、寝てやるものがあります。動功ではほとんど立ってやることになります。

 では、具体的に基本的な姿勢をやってみましょう。

 三線放鬆功(教科書参照)を行う場合などで、寝てやる場合、上向きに体を真っ直ぐに寝ます。

 もう一つの寝てやる姿勢は、左側を上にして横向きに寝る方法です。心臓を圧迫しないように、左側を上にします。下側の右足は伸ばし、左足は膝を曲げて、足首を右足の膝の上に乗せます。右手は肘を曲げて耳のそばにおき、左手は、丹田の位置で、手のひらをつけるようにおきます。 この姿勢をとったら、基本の静功をやってみましょう。

 臍の下、奥の丹田を意識します。初めは自然呼吸でゆっくり、深く、長く、静かに呼吸します。次第に複式呼吸に移行します。息を吸うとき、丹田の辺りを膨らませ、はくときに凹ませるようにします。

 20分位、やると効果が出てきます。

 いろいろな考えが浮かんできても、呼吸と一緒に流してしまうようにします。呼吸の数を数えるのもいい方法です。

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 座る姿勢 

 中国では座禅も気功の一種です。仏教の修行方法に気功がとりいれられ、日本に伝わってきました。禅宗は座禅を中心に行っています。

 禅宗の開祖は、達磨です。釈迦の28代弟子で、インドから中国に渡り、少林寺で禅宗を創設したと言われています。

 日本の禅宗の座禅は、はっきりとはわかりませんが、気功の座り方と、ほとんど差がないように感じました。

 あぐらに座ります。

 背筋を伸ばし、肩の力を抜いて、あごをひいて首の後ろを伸ばします。手はいろいろな形がありますが、ここでは両手のひらを上向きにして重ね、親指の先を合わせます。

 腕は心持ち前に出し、腕全体を丸い感じにします。目は軽く閉じかすかに光が見える状態。口は閉じて、舌を上の歯の付け根につけます。

 慣れるまでは、座布団をあてたり、壁にもたれたりして楽にしておこなっても構いません。

 正座はいい座り方ですが、中国では畳がなく、正座の習慣がないため、普通は椅子に座って練功します。

 椅子に座って練功する場合の注意点は、あぐらの座りかたと同じです。

 座ると膝が直角に、ふとももが床と平行になる高さの椅子に、浅く腰掛けます。

 日常生活中、椅子に座っている時間は以外に長いものです。そういう時間を有効に使って練功します。

 立って行う練功は、元気があるとき、元気をだしたいときに特に有効です。私たちは子供のころから、姿勢については注意されてきたのですが、“きをつけ”、の姿勢は体にとっては余りいい姿勢とは言えないのです。背骨は横から見るとS字にカーブしています。背骨は頭の骨の下から、首に5個、胸12個、腰5個、更に仙骨、尾ていこつと言う具合に、ばらばらの骨が縦にならんでいます。弾力をもった軟骨、椎間板によって、つながっています。椎間板の脇から神経が出ています。

 気功では、このような、本来湾曲している背骨に無理をかけず、その延長線上にある股関節、膝、足首にいたるまで自然なカーブを描きます。

 では立って練功してみましょう。

 まず自然に立って見て下さい。頭のてっぺんから糸でつってあるように、上に引っ張られる感じです。あごをひいて、首の後ろを伸ばします。肩の力を抜いて腕は自然に垂らし、手のひらの労宮(つぼ)に意識を集めます。

 丹田が中心になり、尾ていこつは下に引っ張られる感じになります。股関節、膝をまげ、バネのような感じで立ちます。

 丹田に丸いボールがあり、そこからパイプが上に出て頭から天へ向かい、一方は脚から足の裏を通り地球に向かっていると言う感覚です。

 今度は、足の裏で床をつかむようにして、まるでワカメが海の中で揺れているような感じに、自分がワカメになっているように想像します。 

 普段あまり動かさない関節や筋肉を動かすことで、健康を維持できるのです。

 何も余計なことを考えずにひたすら立ったり、座ったりして、まず雰囲気になれてください。線香をたいて、13センチの細い線香が燃え尽きるのが30分です。瞑想に向く音楽を聞きながらでもいいです。5分、10分と長くして、30分位できればいいですね。 15分以上をめやすにします。

 足腰がなじんできたら、呼吸に進みます。

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 閑話休題  

 日本人の習慣である、正座、気をつけ、食事の姿勢は箸と茶碗を持っては中国、韓国から見るといささか変なのです。あぐらか、椅子にすわるのが普通で、罪人でもなければ正座はしないのです。茶碗を、持ってたべるのは、乞食のイメージになるようです。「行儀良く茶碗を置いて食べなさい。」韓国では、女性が立て膝で、テーブルに肘をついて食べても、注意されることはありません。しかし、田舎や年配の人は、儒教の影響か、まず男性が一人用のお膳で食べ、女性は台所で食べるといった習慣が根強いのです。皆で食べるときは、初対面でも同じコップで飲み、とり箸はないので面食らいました。

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呼吸

 まずは、自然呼吸から始めます。鼻から静かに、ゆっくり、深く、次第に長くしていきます。

 正面から息を吸い込んで、おなかの方へ吐きます。吸うときは遠くを見るようにして、吐くときは丹田を見ます。

 丹田はへその少し下、おなかの中にあり、気の倉庫だと考えて下さい。

 更に深く、次第に長く息を吐いて足の裏まで下ろすようにしていきます。

 息を吸うときは体が伸び、背骨の椎間板が広がるような感じに、吐くときは、更にリラックスさせ、体が縮むような感じになります。

 

 呼吸は、生れたときから死ぬまで、意識しなくても続いているのですが、意識的に呼吸することによって、大きな効用があります。長生きというのが、長い息に読み替えられるように、体を調整し、細胞を若返らせる効果があります。

 いつでも実行でき、確実に効果がある呼吸鍛練は、人生の大きな一助となります。

 自然呼吸で気持ちのよさがわかってきたら、腹式呼吸を練習します。

 腹式呼吸は簡単にいうと、息を吸うとき、丹田の辺りを膨らませ、吐くときに凹ませる方法です。自然呼吸の合間に少しずつ練習していきます。

 呼吸の効果について少し触れておきます。

 心臓を動かしているのは心筋。呼吸を行っている肺を動かしているのは肺筋ではなく、横隔膜です。しゃっくりは、この横隔膜がけいれんを起こした訳です。とても強い筋肉で、故障がほとんどないため、忘れられているのですが、実はとても重要な筋肉です。横隔膜は肺の下にあり、胸膜と腹膜につつまれている筋肉で円錐形になっています。横隔膜の中央に食道が通っていてすぐ下に胃があります。意識的に横隔膜を動かすことで、胃腸を直接マッサージすることができます。

 普通、われわれは無意識に呼吸しているときは、肩や肋骨で呼吸していて、30パーセント程度しか機能していません。そのため、老廃物を完全に排出することができないのです。深呼吸や、腹筋の運動によって、その排出を助けてやる必要があるのです。気功は、横隔膜の動きを活発にし、腹部にたまっていた老廃物を自然に押し出します。腹部でよどんでいた血液は、心臓に送られ、心臓を助けることにもなります。階段を登って、はあはあと、息があらくなるとき、心臓に血液をおくるのを助けているというわけです。

 ですから、呼吸はただ、肺での酸素と二酸化炭素の交換だけではなく、横隔膜の動きによって、腹部の新陳代謝を促進し、内臓を活発にし、強化することになるのです。

 腹式呼吸は、すぐできる人と、なかなかできない人がいます。難しいと思う人は、寝て、お腹に手を置いて確かめながら、根気よく練習してみて下さい。

 正座して、両手の指先をみぞおちに当て、息を吐きながら力を抜いて、体を前へ倒し、頭を床につけるようにし、息を吸いながら体を真っ直ぐにする。これを何回か繰り返すと、腹式呼吸を感じやすいと思いますので、試してみてはいかがでしょう。

 自然呼吸でも、体の奥まで空気が充分に行き渡った感じがつかめれば、まずは充分です。

 意念

 姿勢、動作と呼吸に慣れたところで、意念ということになります。気功でいう意念は、意識、無意識、といった精神の作用のほか、神経の働きをも含んでいます。

 横隔膜は、無意識に自律神経の働きによって動かされていながら、意識である運動神経によっても動かすことができます。このことが、とても重要です。意識的に心臓を早く動かしたり、大きく動かしたりして、血液の循環を促進したりすることはできないのですが、横隔膜を意識的に動かすことで、呼吸量を増やすことができます。つまり、自律神経と運動神経との接点になっています。このため、呼吸を調整することで、自律神経を調整することができる訳です。

 自律神経は、交感神経と副交感神経とからなりたっています。交感神経は心臓を興奮させるが、消化器に対しては抑制に働く。副交感神経は夜の神経とも言える、心臓を休め、消化器を活発にします。陰陽に置き換えると中国医学の考え方に通じます。人体の陰陽バランスが狂うと病気が起こるというわけです。

 同様にホルモンも作用しています。

 自律神経、ホルモン、この異常がもたらす苦痛ははかり知れません。慢性胃潰瘍で10年以上も薬を手放せない人もいます。どうして、人間は自分自身を傷つけてしまうのでしょうか。

 気功は、自律神経やホルモン分泌器官を調整する効果があります。呼吸法を行うとき、吸う方を意識して、長く強くおこなうと、交感神経は興奮し、反対に吐く方を強くすると、副交感神経が興奮することがわかっています。気功によって自立神経を意識的に調整することができるということです。

 

 では実際に気を集めたり移動させたりしてみましょう。

 姿勢は気にいっているスタイルでいいでしょう。

 息を吸うとき足の裏を意識、吸いながら丹田までたどってきます。息を吐くとき丹田を意識、吐きながら、足の裏まで、たどっていきます。根気よく繰り返します。

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気を感じて見ましょう

 手のひらの中心から少し指の方にいったところに、“労宮”というつぼがあります。このつぼを、反対の手の親指でよく揉みます。両手を擦り合わせてから労宮に反対の手の指先を近ずけて見ます。指先を動かすと微妙な感じがあります。

 とても微妙です。かすかです。なかなか感じない人も多いのです。感じなくて当たり前です。私も、はっきりと感じるまでに2年位かかりました。

 手が敏感になってくると、植物や置物などに、手を近づけると、いろいろな感覚がでてきます。見た目にも美しい花などには、恋愛感情のような感じを受けてはっとすることもあります。木の幹などでも、安心できるような感じがぐいぐいと伝わってきたり、元気になってきたりするのです。

 中国留学中のことです。上海のホテルで、同室の青年の指先に、自分の敏感になってきた左の手のひらを近付けていると、いきなり自分の胃が重苦しくなってきました。何か悪い物でも食べましたか、と聞くと、1週間前から腹の調子が悪くて、と言います。体が冷えるような気もしました。ふたのできる空き瓶にお湯をつめて、おなかにあてるといいですよと、アドバイスしました。

 肩がこって辛いという人に、覚えたての中国マッサージをしていると、いきなり自分の左の肩甲骨のあたりがずきずきしました。同じ所を押さえると、飛び上がるほど痛がるのです。そこをていねいにほぐしていると、自分の肩も楽になったのです。

 気功を練習していくうちに、いろいろな発見があるわけですが、私の場合、上記のように、相手の痛みのある場所や、調子の悪い場所が、自分に伝わってくるようになったことが1番大きな発見でした。半分遊びのような感覚でしたから、ではこの人の体を見て下さいと言われても、診断できるというわけにはいきませんでしたが、手をかざしたり、マッサージをしているうちに、今までなんともなかったところが、急激に痛んだりするのです。

 気功の効用について、その他いろいろ報告されています。私の経験した範囲でも、極めてすごいと感じています。でも、いつのまにかそれが当たり前となってしまうのですが。同じように練習しても人によって発揮されることは異なってくるようです。願わくは皆さんの中から大きな発見がありますように。

 まずは、気というものがどういうものか知り、使い方を練習し、すでに持っている気を、充分生かしていくことです。気功によって気の力を高める前に、滞っている気を流し、遊んでいる気を活用することが必要ではないかと思っています。

 共に練功できる人がいるということは、なんとすばらしいことでしょうか。本当に私は恵まれているとつくづく思います。練功をしていると、お湯が沸騰するように、一気に花開くときがあります。それをみなさんと共有できたら最高だと思っています。

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