気功とは   中国気功の全体像

 

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気とは何か    古代中国の陰陽五行   健康はお金では買えない  気功と古墳  体質と病気   日本に渡った仏教、道教

気功の三要素  気功の流派  朝の公園で  日本の漢方と医学  気功治療の位置づけ  中国気功の流行
気とは何か


 気を信じる、信じないと言う前に、気と言うものがどういうものか知ることが、まず、気功の第一歩です。

 現代では気はどういう意味で使われているでしょうか。


 大気、空気、天気、電気、磁気、湯気、湿気などの自然現象から、気持ち、気のせい、気付く、陽気、気配、殺気、など心の働き、病気、正気、邪気、など病気に関する意味あいなど、一見気とは無関係にこうした言葉が使われているようで、実は気の性質をよく現しています。 
 気は世界を動かしているエネルギーで、生命の源です。又、中国医学では、気とは、この世界にあまねく存在する物質の元となる微細なもの、と定義づけられています。気が集まれば、命になり、気が散ってしまえば、死んでしまうと考えられてきました。人体を構成する最も小さい単位の物質で、エネルギーをもつものといわれています。


 人体の気は、、父母から受けた先天の気と、大気中の酸素と、飲食物から摂取された栄養とによって体内で作り出された後天の気にに分類され、この2つの気が、生命を維持していることになります。その働きによって、意識、感情も生まれ、内臓や器官が活動します。
 体内を循環する気の通路を、経絡といい、経絡上の気の出入り口を、つぼといいます。
 内臓などのコントロールは、気の働きによるもので、病気も、文字どおり、気が病むと器官も悪くなる、ということからきているわけです。気の流れが悪くなると、痛みを感じます。


 気功師の出す気を科学的に分析すると、微電流、静電気、電磁波、磁力線、赤外線、音波、光、などが検出されています。
 手のひらに感じるチリチリした感覚、ピリピリとした感じ、暖かさや、ひんやりした風の通る感覚などで実感することができます。
 気功は、自分自身の気を鍛練するのが基本です。始めた当初は変化がなくても、お湯がある温度になると、沸騰して、湯気に変わるように、効果が現れます。その時まで、続けなければ、気功のよさはわからないのです。自分自身の気が高まれば、コップの水があふれるように、気は流れ、相手の人に対して、治療を行うこともできるようになります。

 

 気の感じ方については、4種類の人に分けられます。気に対してかなり敏感な人は、経絡最敏感型といわれ、古代、経絡があることを、実際に証明する際に、活躍しています。たとえば、数メートルあるいは更に遠くに離れたところからでも、すぐに、気功師の気を感じることができる人です。次に、経絡敏感型の人で、割合近いところから、一定時間気を受けると、反応がある人です。不敏感型の人は、気を受けても、なにも反応のない人です。又、遅延型の人は、何度も外気を受けるうちに、次第に敏感になっていく人です。最敏感型、不敏感型は、少数派で、大部分の人は、敏感型か、遅延型です。外気を受けるのみならず、自分で練功(気功を練習)することによって、遅延型が、敏感型に変わります。                                                                                      

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健康はお金では買えない

 

 蛋白質が足りない。ビタミン、ミネラル、カルシウムが足りないのではないか、と心配して、栄養剤、ドリンクを飲んでも、食事毎に飲まなければ効果はないのです。そして、飲み続ければ、体内で栄養を作り出す能力を失ってしまい、体内のバランスも、狂ってきてしまいます。牛は、あれほどの体を草と水だけで作り出しています。穀物や、草以外の物を食べさせると、かえって病気になるのです。植物は、太陽のエネルギーと、空中にある窒素などの物質で成長します。このように、生物は必要な物質を合成する能力を持っています。

 人間も、こういう能力を、衰退させないようにしなければならないのです。
 運動不足だ、という脅迫観念から、運動器具を買い込んで安心する。はなはだしきは、体力年齢に合わない激しい運動をして、体を痛める。間違った運動で、腰痛や、関節炎などを起こすこともまれではありません。

 高価な薬も、万人に効くものはありません。ある人が何に効いた、と言うのを信じて飲んでも、体質は一人一人異なっているように、効き目も個人差があるのです。
 中国医学では、同じ病気でも、人の体質によって異なった薬を処方します。気功にも、多くの功法があり、その人の体質に合った功法をおこなわなければなりません。いつでも、どこでもできる健康法なのです。気功は、外見は動きがない時でも、内面では充分動いているのです。そのため、見かけ以上に効果があります。気血の循環が促進され、内臓のマッサージにもなっています。

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体質と病気

                                                                                    

 脈診という言葉があります。西洋医学で脈といえば、心搏数が1分間に何回、ということなのですが、中国医学では、脈の状態で内臓の働き具合や、病状を判断します。3本の指を、手首の線から腕の方へ並べてあてがい、左手は、手首の側から心臓、肝臓、腎臓、右手は肺、脾臓、腎臓、という具合に見ます。浮いている脈、沈んでいる脈、早い、遅い、弾む、細い、力のある、など、28種類の組み合わせで判断します。

 体質、病状を判断する基準は、陰、陽、表、裏、寒、熱、虚、実の8つです。八綱と言われるものです。身体の陰陽のバランスが狂うと、健康が損なわれます。陰陽のどちらに傾いているかを見ます。病気が表面にあるか、奥まで侵入しているか、を表裏で判断します。風邪の場合、喉が痛いうちは表、気管支炎から肺炎になっていれば裏、ということになります。熱があれば熱、寒気があれば寒ですが、体の奥で判断します。体の芯が冷えていても、表面は熱っぽいときなどは、寒になります。
 虚は、気が弱って病邪に負けている状態。実は、気が充分強いが、病邪の力が更に強い状態です。虚の時は、気を補い、実のときは、邪気をぬきとる治療を行います。
 足りないものを補い、余計なものをとりさり、バランスをとっていくことが治療の原則なのです。
 もって生まれた体質や、環境、生活習慣などにより、肝陰虚、心陽虚、腎陰虚、小腸実熱、などの証(体質)になり、病気の症状がでてくると考えるのです。
 気功をやるときにも、体質にあった功法を選択することが大切です。

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気功の三要素  

                                                                        

 気功の三要素は、「調身」=姿勢と動作、「調息」=呼吸、「調心」=意識です。

 

 調身
 調体ともいわれ、姿勢を整えることです。調身だけでも、病気の多くは快方に向かう、といっても過言ではありません。「よく動かす、ちょうつがいは虫がつかない。」ということわざがあります。昔、家のドアは木でできていました。木製のちょうつがいの部分は、何年経っても虫が食わないのです。「流れる水は腐ることがない。」すなわち、身体を動かし、姿勢を正しくすれば、病気の半分は治ってしまうと言ってもよいほど、姿勢と動作は重要です。

 

 調息
 最近、自律神経失調症という言葉を耳にしますが、内臓を無意識にコントロールし続けている自律神経の交感神経と副交感神経のバランスが、環境に適応できず狂うわけです。中国医学では、陰陽のバランスが狂うと病気を引き起こす、と説いていますが、まさに、交感神経と、副交感神経が、陰と陽の関係になっているのです。
 交感神経と、副交感神経は、各内臓器官につながっていて、交感神経が興奮すると、心臓は高鳴り、胃腸は休まる。副交感神経が興奮すると、心臓は落ち着き、胃腸は活発になる。
心臓、肝臓、腎臓、肺、胃腸などの内臓器官のなかで、一つだけ自分の意思で動かせる器官があります。肺です。ヨガの行者や、鍛錬をつんだ気功師でもないかぎり、心臓の鼓動を意識で早めたり遅くしたりできませんが、呼吸は思うように調節できます。
 呼吸は、生まれてから死ぬまで、自律神経によってコントロールされていますが、自分の意識でもコントロールできるのです。つまり呼吸は、自律神経と、意識との接点でもあるわけです。また呼吸によって、空気中の『気』を吸収したり、排出したりしていますので、呼吸を意識して調節することによって、自律神経と、気の流れを調整できるわけです。
 では、肺を動かしているのは何でしょうか。横隔膜です。この筋肉である横隔膜を鍛えることによって、自律神経を調整できるようになるのです。調息とも言う、呼吸訓練は、このように陰陽を整え、さらにはホルモンを調節します。

 

 調心
 気功で言う”心”とは、想像、思考、精神、神経、意識、無意識などをひっくるめたもので、意識活動全体を意味します。
 中国医学では、病気の原因を、内因と外因の2つに分けています。外因は六淫とも言い、いわゆる外邪である、邪気です。邪気というと、とんでもない妖怪のたぐいを想像するかも知れませんが、中国医学でいう邪気とは、風、熱気(暑気)、湿気、乾燥、寒気、火の気のことを指します。風は肝臓、熱気は心臓、湿気は脾臓、乾燥は肺、寒気は腎臓を傷つけます。、 内因は、七情とも言い、怒り、喜び、思い煩い、悲しみ、恐れ、憂い、怯えの7つで、自分自身の心の働きで出てくる感情です。過度の怒りは、気を上昇させ、肝臓を痛めます。過度の喜びは、気を緩ませ、血圧上昇、心臓に負担がかかります。宝くじに当たって心臓麻痺の発作を起こす人もありました。思い煩うと気が固まり、胃を痛めます。過度の悲しみで、気が失せ、肺を痛めます。肺病を患ったひとは、どことなく悲しそうに見えるものです。
 恐れは、気を下げ、腎臓を傷つけます。
 気功は、感情のバランスを整え、内臓を安定させることになります。

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朝の公園で

                                                                                 

 上海の玄関は、イギリスが開いた外灘です。往時をしのばせる美しい石造建築が立ち並んで、観光客が絶えません。朝、夜明け前から、朝もやをついて、外灘の公園に気功愛好者たちが集まって来ます。一回りして、ひときわ掛け声の大きい、5、6百人のグループに声をかけると、「シャンコン」という答えが帰って来ました。これがうわさの「香功」か、とさっそく後ろについて始めてみました。先生について、まず方法を学び、家庭で実践します。

 気功には1000を越える流派がありますが、大勢でやることで気のエネルギーを高められ効果があるものがあります。中でも最も人気があるのが、上記の、香功とよばれている中国芳香智悟気功です。仏教の悟りを開くための習練の方法として、僧侶の間で代々伝えられてきたもので、民間に紹介されたのは、1988年からです。爆発的に人気が出ました。その理由は、効果がとても高いのに、やさしくてだれにでもすぐ始められるからです。
 香功は、手がアンテナのような役割をして、たくさんの人々が同時に行うことによって、生み出された気の波動を受けることができます。ラジオ体操などとは異なる、気の場の働きで、身も心も楽しくなってきます。

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気功治療の位置づけ 

                                                                      
 中国医学と言えば、漢方薬を思い浮かべる方も多いでしょう。日本では、漢方医学を勉強しても医師の免許はもらえませんが、中国、韓国では、漢方専門の医師がいます。中国医学の中には、漢方薬のほかに、針灸、推拿と呼ばれている按摩整体。それと気功がふくまれています。
 私の学んでいた病院は、上海でもかつて日本人が30万人住んでいたという虹口区にある虹口区中心医院です。日本時代の建物がひしめきあって、当時が忍ばれます。病院の建物がとても古く、日本時代は何に使われていたのかと考えたりしました。
 

 虹口区中心病院の診療は、西洋医療と、中国医療の両方があります。患者は受付で、西洋内科、または中医内科、西洋外科か中医外科、言った具合に選ぶわけです。
 腰痛を例にとると、西洋外科でレントゲン写真をとって、痛み止めを処方する場合もあれば、理療科で温熱療法や、牽引療法を受ける場合もあります。また、中医外科でぬり薬をつけてのマッサージや、低周波治療を受けたり、漢方薬を処方する場合もあります。更に、針灸科に行き、神経ブロック注射をして、針灸、マッサージをすることもできるのです。つまり、その人にあった治療法を選ぶことができます。そして気功治療です。
 虹口区の病院では、気功治療は週2回ですから、全体のなかで占める割合はきわめて低いのです。

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古代中国の陰陽五行 

 

 現代中国の考え方の基礎は、毛沢東思想による社会主義建設と言う事ができます。神とか霊魂の存在を認めません。中国医学の理論でも、神というのは生命現象であって、意識、思考活動のことをさします。生命の終焉とともに、すべては消滅すると教えます。毛沢東を貴ぶあまり、中国医学も作り直されたのかと思ったのですが、そうでもないようです。毛沢東の理論は、マルクスのいう社会主義とはだいぶ異なり、中国古代の思想によるところが多いのではないかと思われる節があります。
 

 古代中国の陰陽五行の考え方が中国医学の基礎になっているわけですが、それによれば、この世のものはすべて物質から成り立ち、魂や神などは、内臓の働きによって現れた人間の生命活動によって生まれるもの、と解釈されています。二千年以上前、中国で書かれた”黄帝内経”という医学書にちゃんと書いてあるのです。
 世の中の物は、すべて陰と陽に分けられ、木、火、土、金、水の五つ要素から成り立っているというのが、陰陽五行の考え方です。
 

 五臓六腑という言葉がありますが、ご存知でしょうか。
 五臓は、上から、肺、心臓、肝臓、腎臓、そして、脾臓。臓というのは気を蓄える場所の意味です。六腑とは、まず胃、消化器官です。腑とは、蓄えない空洞の器官の意味です。小腸、大腸、たんのう、膀胱、三焦、の六つが六腑です。膀胱も蓄えている、と言いたいのですが、おしっこはいらないものですから、蓄えてるとは言わないのです。三焦は、どこにあるのか知っている人はいないようです。古代の中国の医学書によると、三焦は、人体の最大の器官となっています。実は該当するものが確定されてない、体液の循環の機能を指していると言うことです。人体も陰陽五行に分類されているわけです。
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気功と古墳 

 

 中国で、気功と言う呼び方がでてきたのは50年程前で、それ以前は、導引とか行気、布気、吐納などど呼んでいました。中国で、2000年前の馬王堆の墓から出土した布に、導引図というのが書かれてあったことで、中国で導引が見直されたのですが、この図は、体操しているような44人の人が描いてあります。いろいろな職業の庶民の服装をしている老若何男女なんです。6世紀につくられた奈良の高松塚古墳の壁画などに書かれている女官の服装は中国の宮廷の服装なのですが、これよりも簡素な服です。このことからも解るように、導引は、2000年以上前に完成されて、庶民が行っていたと考えられます。古墳というのはおもしろいですね。タイムカプセルです。言い伝えだけで、現物は残っていないが、こんなものがあったんではないか、と考えられていたものが、ちゃんと出てきたりします。中国の場合、2000年前に完成していた中国医学の資料が古墳から出土して、忘れられてしまっていた、と言う事が分かったりするわけです。

  奈良の高松塚古墳の壁画には、中国の宮廷の女官とそっくりな姿が描かれています。星座を天に配して、南の壁には朱雀。これは孔雀のような鳥、北に玄武、亀の体に頭は蛇。東には青龍、西に白虎が描いてありました。これは、韓国の百済の古墳にも同じデザインがあり、中国の道教の、東西南北の方角を司る神そのものです。道教との関連が窺われます。

  中国の古典を紐解くと、2000年以上前に書かれた書物に、早くも気功のことが理論的に書かれています。当時按摩とか、針灸の理論も完成されていたわけで、黄帝内経、針経という書物がそれにあたり、じつはお経の一部なんです。お経と言えば、普通、仏教経典のことを指すわけですが、これらは、道教の経典です。道教ってなんだと言う方もいらっしゃるでしょう。今回、私が上海で主に習ったのが、実は道教の気功なんです。

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日本に渡った仏教、道教

 

 道教は、中国の国粋の宗教だそうで、国粋などと言うと、びっくりするかも知れませんが、上海の気功の先生がそう言うのです。
 その当時、中国では、インドから入ってきた仏教に触発されて、中国固有の神道が、仏教の形態をとりいれて、道教ができるんです。あれ、神道って日本のものじゃないの、とおもった方もいらっしゃるでしょう。私も大学でそう習ったのですが、どうやらそうでもないらしいのです。中国の道教の書物の中、に天皇とか鏡とか剣、神器や神社、神宮などがでてくるのだそうです。日本に仏教が伝わったのは、聖徳太子の時代。遣隋使とか、遣唐使の中に日本人修行僧がいたわけです。平安時代の初めに最澄、空海などが苦難をへて、船で唐の都長安に行き、修行したのです。
 
 庚申塚(こうしんづか)というのが日本にもありますが、中国では、庚申の日(60日に一度回ってくる日のひとつ)の夜、体の中に住んでいる妖怪が、天に日頃の人々の悪行を報告に行くといわれていました。それをさせないために、人々は、更新塚のそばの家のなかで、一晩中起きていてるという行事です。それが後に日本に伝わったのです。そして、この庚申信仰も、道教からきているんだそうですが、私も知りませんでした。
 
 さて、中国仏教の最大勢力の禅宗ですが、インドの王族の達磨が、6世紀、中国にわたり、禅宗を開いた訳です。この達磨大師が、拳法で有名な少林寺で座禅をしているとき、一指禅推法、と言う按摩の手法を体得したと言う事になっていますが、もちろん按摩と言うのも、先程の導引や、針灸ができた時代からあるのですが、インドの僧が、中国で、中国古来の按摩を発展させたという経緯がおもしろいですね。
 日本に伝えられた禅宗、浄土宗は、実は中国の神道である道教と、インドの仏教とが交じり合うことによって、できてきた、中国特有の宗派でした。そして、当然にも、中国の気功も、仏教の修行の中に取り入れられていたのです。座禅と気功の座り方がそっくりなのです。
 日本にも、仏教と共に道教が伝わって来ました。もちろん、気功も按摩も伝わって、盛んに行われていたのでした。

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気功の流派  


 気功には、流派やスタイルが多く、3000以上とも、8万8000あるとも言われていますが、大きく5つに分けられます。道家と道教、仏家、儒家、医家、武家気功です。
 武家は、武術で、拳法、少林寺拳法などをする人が、心身を鍛える方法です。
 レンガに指で穴をあけたり、かなづちの代わりに頭でくぎをうったり、刀の刃の上を裸足で歩いたりするのが、これにあたります。太極拳は、300年程前鍛練法として作り出されたもので、気功の一種です。ヨガもインドから中国に伝えられて、気功に関連があります。

 流派による違いは何かと言うと、目的が違うのです。道家は不老長寿、仙人になる方法です。中国には何百才など言う白髪の仙人伝説が多いのですが、これは男で老人です。女性の仙人は女仙ですが、年をとらないのです。女仙は美貌で、茶店の女主人が仙女になって、若い旅人を誘っては英気を吸い取って、200才になっても18才位に見えた、などという話が多いです。日本では、逆に、仙女伝説が多いのです。羽衣の伝説とか、浦島太郎の竜宮城の乙姫様、がそれです。気功を極めて天女になろうと言うわけです。悟りを開く方法である座禅そのものも、気功といっても差支えありません。
 儒家は、易者の八罫に通ずるものです。気功の理論の中に八罫が入っています。
 医家は、医療のための気功です。毛沢東率いる人民軍が、医療品の不足に悩んだ時、中国には伝統的な気功療法があるじゃないか、と取り入れて、研究が進みました。
 

 ところが文化大革命の時期、1960年から1978年の間、気功は唯心、迷信の帽子をかぶせられ、壊滅的な迫害を受けます。気功だけではなく、宗教も、道教、仏教の寺院なども、ことごとく破壊され、活動を停止しました。もちろん、医療専門の気功も廃止になったのです。古くからの貴重な仏像も叩き壊され、寺の本堂などは、学校の体育館かなにかにされたりしました。腕のいい気功師などは、アメリカへ亡命したりして、外国で気功が発展することとなるわけです。

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日本の漢方と医学 

 

 上海で、私の先生が一時間目に語ったのは、民族には民族の伝統医学がある、まずそれを大事にしていくことが任務だ、と言うことでした。では、日本の伝統医学は何でしょう。お手当て療法も、その一つかも知れません。

 日本では、明治時代に、従来の民間医療は、次第に取り締まられて消えていきました。宗教の一部として、残ったものもあったのですが、忘れられていきます。明治39年、免許を受けずに医業をおこなってはならないという法律が成立。41年には、「病人に対して呪いをしたり、あるいは祈祷をしたり、超自然的存在の人間が乗り移ってその人を通じて話をして行動する巫術、あるいは、神様のお札を上げたり、水をやって、医療を妨げるような人を罰する」という法律もできる訳です。
 地方によっては取り締まりが無く、今でもこういう治療は行われています。
 戦後は、こういった法律は、新憲法発布と同時に失効しました。職業選択の自由が保証されました。
 昭和22年に、医業類似行為の禁止をうたった法律ができます。しかし、実際に行われているなかには、医療の補助手段として効果があるものもあるので、それ以前から開業していた人については、届出をすれば営業できることになり、新規には開業できなくなりました。そして、伝統的な治療法がゆっくり消えていったのです。新しい免許制度確立を目指して、国が調査をしたのですが、500種類もあって調査が実質的に不可能だったのです。
 昭和30年からは、針灸、按摩マッサージ、指圧、柔道整復については、免許制度ができたので、国家試験に合格すれば、新規に営業できることになりました。それ以外は、見捨てられた訳です。たとえば、昔はもぐらの爪を使ったそうですが、今は金の爪を使い、皮膚の表面を引っ掻いてその色の濃淡で病気の部分が分かる、という皮膚そうは療法などがそれにあたります。
 食養と呼ばれている健康食が、自然食として、現在脚光をあびていますが、陰陽の考え方や、漢方薬に含まれる部分も意外と多いので、医療の一種と考えるべきでしょう。
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中国気功の流行 


 中国の話に戻りますが、1978年、文化大革命の嵐が去り、まず、医療気功が、政府のおすみつきで息を吹き返します。今でも、中国では医療気功が主流ですが、共産主義の立場からは、宗教は敬遠されがちなので、これは当然でしょう。
 それ以来、宗教系の気功もしたたかに、不死鳥のように復活してくるのですが、霊感商法と結びつけて悪用するグループもあり、ひんしゅくを買う場面もありました。
 1989年 自然中心功を創始した張香玉のグループが、”大自然の魂魄”という本を出版しました。自然中心法は、この本を読んだだけで精神錯乱になる人がいたほど、問題のある気功です。主催者は、結局詐欺で逮捕されましたが、短期間にたくさんの患者を出してしまいました。その他にも、気功を知らない人が見よう見まねで、治療して金をもうけるとか、随分気功の名を落とした出来事があったのも事実です。

 そんな中で、人民のために、地道に治療を続けている気功師もいるのです。
 私が勉強していた上海の虹口区中心病院では、一週間に2回気功治療を行っています。大都市、上海でも国家的に認められている医師としての気功師は、20人程しかいないようです。私の先生は、上海気功研究所でもっぱら日本人留学生を教えながら、腰痛治療をしています。その先生がこの病院に、週2回出張してくるのです。8才から仏教系の父親について気功を始めた、医療気功の本格派です。

 先生が勧める、三線放鬆功(さんせんほうしょうこう)は、上海気功研究所で実践の中から完成されたもので、気功を始める人には最適で、安全なものです。

 気功を行っていくにあたっては、地道に、基本的な気功の練習を積み重ねることが重要です。