木火土金水と風水

月月火水木金金  忙しい現代人

 木火土金水
 もっかどごんすい。という言葉を耳にしたことがおありでしょうか。木火土金水と書いてもっかどごんすいと読み陰陽論と組み合わされて陰陽五行という。最近ではほとんど耳なれない言葉であるが、中国で数千年にわたって使われ続けてきた言葉である。
 中国占術の根幹をなすもので、これなくして中国文化を語ることができないと言っても過言ではない。最近話題になっている風水や九星占いといったものもこの木火土金水がわかるとその仕組みもおのずと理解できる。迷信とされてかえりみられなかった時代もあったがまんざら否定できない歴史と深みをもっている。
 江戸時代までの日本では陰陽五行や風水といったものが日常的に使われていたと思われる。時代劇の中で時間を「うしみつどき」などと言い表わし、方角を「いぬい」とか「たつみ」とかいうのをきいたことがおありでしょうが、五行、風水の言葉そのものなのである。
 

 古代中国で農業が盛んになると太陽や月を観察して暦が考案されそれをもとに農作業が行なわれるようになった。十二支で月を数え、十干で日を数えた。十干つまり十日を旬と呼び今でも上旬、中旬、下旬という使い方をされている。月の運行を観察すると一年間に十二回満ちては欠ける。そのため一年を十二月にした。惑星の動きにも注目して木火土金水の五行説がでてきた。ここでえとというものから簡単に説明しておきたい。
 

えととは兄弟の意味

 干支と書いて「えと」というが「えと」は兄弟という意味である。甲乙丙丁戊己庚辛壬癸の十個である。植物の一生をかたどったものでもともとは日を数えるものだったが、後に五行にあてはめられた。
 甲はきのえと読み木の兄。乙はきのとと読み木の弟。丙はひのえと読み火の兄。丁はひのと読み火の弟。戊はつちのえと読み土の兄。己はつちのとと読み土の弟。庚はかのえと読み火の兄、辛はかのとと読み火の弟。壬はみずのえと読み水の兄。癸はみずのとと読み水の弟。つまり木日土金水を兄弟にわけたのである。
 
 

十二支は月のみちかけに関係あり

 十二支は子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥の十二個で動物の鼠、牛、虎、兎、龍、蛇、馬、未猿、鶏、犬、猪にあてられているが、もともとは一年の月を数えたもので植物の芽生えから収穫までの移り変りを順をおって表現したものである。日本では猪年というが、中国では豚年という、豚という動物は神聖な動物でそんごくうに出てくるちょはっかいのように善なるものなのだった。
 この十干十二支を組み合わせると六十になり、甲子、乙丑、丙寅と続き六十年後にまた甲子に戻る。このため六十才を還暦といって祝う。今年は平成九年丁丑三碧木星である。丙午(ひのえうま)のとしに八百屋おしちが江戸を焼き払ったといことで丙午生まれの女性が敬遠されるということがあった。昭和四十一年がその年にあたり、今年で三十二才になっている。
 

古代式時刻の表示

 さて年、月、日の数え方がわかったところで時刻を説明しよう。
 午前0時を中心にして前後二時間を子の刻といい、さらに三〇分づつに区切り、一刻、二刻、三刻、四刻と呼んだ。十二支に一日二十四時間をあてるので、一支二時間となっている。丑みつどきは丑満つではなく、丑の三刻すなわち午前二時から二時三十分ということになる。同様に正午は午後0時から0時三十分の間。
 またこのほかに、民衆の間では日の出から日の入りまでを六等分してあけむつ、あさいつつ、あさよっつ、ひるここのつ、ひるやっつ、ゆうななつ、と呼んだ。同様に日の入りから日の出までを六等分してくれむつ、よるいつつ、よるよっつ、あかつきここのつ、あかつきやっつ、あかつきななつ、と呼んだ。今でも朝、昼、夕方、暮れと言っているとおりである。
 これで今の時間を古代の表現方法で表せることができますね。やってみてごらんなさい。おどろくべきことに中国では紀元前十六世紀にはすでに文字と暦が使われていた。今日の年月日時刻の組合せも甲骨文字に発し、その占星術による判断も秦の始皇帝の時代には確定されていたことに思いをはせると、古代表記式の時計がほしくなったりするのは私だけではないだろう。
 続いて風水の要でもある方角の表し方を説明します。
 

二四方位を知っておけば災難を回避できる
 

 三百六十度を二十四方位にわける。北から東の順に子癸丑艮寅甲卯。東の卯から乙辰巽巳丙、南の午まで、さらに丁未坤申庚、西の酉、辛戌乾亥壬となり、一方位十五度をあらわす。北東は艮でうしとらと読み、うしととらの間で鬼門とされてた。鬼が牛の角を生やし虎のふんどしをしているというのもこのこととおおいに関係がある。
 
 十干十二支にそれぞれ意味をもたせさらに陰陽五行に対応させて占術ができてくるわけだが、その基本は五行の相生と相克関係である。相性とおきかえてみればわかる。木火土金水の順方向は相性がよく木土水火金は相性が悪いのである。
 なんだそういうことかわかってしまえば生れ年による相性判断などいとも簡単なのである。
 

風水を現代に活かす

 風水はしかし、一方では一部の階級が自らの権益を守るために秘密にしてきたという側面もある。徳川政権が江戸城をつくるにあたってすぐれた風水術を駆使したといわれているが、どうもごく一部の人しか知ることはなかったようなのである。
風水は大地の気の流れを知り、その活力を利用するための知恵であるといえる。

 奈良の都平城京、唐の長安をまねたといわれる京都、皇居、韓国の慶州、今回めぐったソウルと見てみるとその根底に風水思想がうかがえる。
 平城京はわずか70年で崩壊した。平城京跡を訪ねてみると田圃の下にそっくり埋没したままになっている。平安京は千年にわたって都として栄え今日もその栄華がしのばれる。この違いは風水で解釈できるのである。

 ここで風水の概念を説明しよう。

 大地の気の流れは風にのって散り、水に区切られて止まる。気を蓄え活かすにはそれなりの地形が不可欠なのである。四神相応といい、東の青龍、西の白虎、北の玄武、南の朱雀が整っていて、龍脈がふきだし明堂を形成していなければならない。
 地球のエネルギーは中国のこんろん山脈から発し、龍脈となって東へ進み、北へのぼった支流は樺太から北海道を経由して富士山へ到着する。京都を例にとると富士山から峰を走り谷を越えて、丹波山地から鞍馬、貴船山に入ってくる。そして京都の中心部へ龍脈からあふれてきて明堂を形成している。
 鞍馬、貴船は北の玄武にあたり、東山が青龍、鴨川桂川が南の朱雀、西は嵐山が白虎ということになり、全く理想的な環境になっている。

 ソウルの景福京は北に北漢山を背負い、西から東へ囲むように漢江が流れ、韓国一の風水の地である。その正面に日本が占領時代に総督府を建設して、龍脈が断たれたといわれていた。大理石作りの重厚な作りは八十年の風雪にもびくともせず、美しい姿を保ち続けていた。その総督府も昨年撤去され今は打ち砕かれた残土が山になっている。
これで、龍脈がいきいきと復活し朝鮮半島に隆盛が訪れる日も近いと考える人たちも多い。
風水の原点

 ここで打ち明けなければならないのだが、風水は先祖の墓のよしあしを見るのが中心になっていた。先祖の霊が子孫を見守り助けるために条件のよい墓どころがどうしても必要だったのである。洪水で流されたり山崩れにあったり地盤がかたむいたりしては子孫の運気にもろに影響するとかんがえられてきた。こういうと、せっかくマイホームを建てたのに川が氾濫して流されたなんていう報道を筆者のように思いうかべる人もあるだろう。
これが風水の原点である。家を建てる前にその土地の経歴や状態をよく観察せよということだ。建ててしまってからではもう遅い。まして、山崩れに埋もれてしまってから気がついても、文字とおり後の祭りなのである。あ、失礼そうういう人にも道はあるのでそうがっかりなさらないでくださいよ。

古代中国は想像以上に科学が発達していた。

 火薬、羅針盤、印刷術といったものに代表されるが、その内容は医学、化学、天文学、地理学、植物学、など多岐にわたっている。
 特筆べきは漢字の発明である。殷の遺跡から発掘された甲骨文字として知られる、亀の甲羅や動物の骨にきざまれた文字が漢字の原型である。時代とともに充実し漢の時代に完成された。今日まだ不足ないほど、内容が豊富であった。漢の時代といえば日本では卑弥呼の時代以前の紀元前二世紀から紀元2世紀なのである。
 漢王朝が誕生する前、秦の始皇帝の時代すでに今日の中国文化の基礎ができあがっていた。春秋戦国時代とよばれる紀元前四世紀に老子、孔子、孟子など偉大な哲学者があらわれた。無数の書物がこの時代に書かれ、秦の始皇帝が集めて燃やしたという記録も残されている。

惑星は運命の星

 陰陽五行は当時陰陽家といわれた学者たちが打ち建てた、基本思想である。天文学の観点からいえば、惑星の動きにあてはめている。
 太陽系は太陽を中心に水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星の順になっているわけですが、中でも大きく青く輝く木星、火のように赤く燃える星火星、黄色くリングをもった土星、白く輝く金星、黒光する水星の五惑星に注目した。
 惑星は動きが他の星とは異なっていて人の運命を示していると考えられた。
いわゆる、占星術である。
 ここでは占星術については省略するが、世界のあちこちに星を観察した痕跡が残っている。韓国の慶州には有名な古代の天文台がある。この五惑星の運行がが人の運命や天変地異、農作物の出来具合、さらには他国との戦運までをも表していると考えられたわけである。
 また、原始的な科学ではこの世界はすべてこの五つのエネルギーで動いているとも考えられたわけです。
我々は、この世のなかのすべてのものはこの5つの要素に分類されると解釈したほうがわかりやすい。身のまわりのものも木製品、金属製品、土から生れたもの、火を使って作られたもの、水に関わりのあるものなどと簡単に分類できます。
第一話  終了第二話でまたお会いしましょう。
                   文責  南風祥